Column 7 今の高円寺を生きる人
座・高円寺支配人 桑谷哲男さん(2)
■桑谷哲男さん<第2部>
杉並区立杉並芸術会館『座・高円寺』支配人
想定外になっている点とは?
それは、公の施設を民間が管理できるという指定管理者という制度があるのですが、『座・高円寺』の指定管理者を、杉並区が3年も前に決めたことです。
普通は劇場ができてから指定管理者を決めることが多いんですね。
はい。全国的にみても劇場ができる前に指定管理者を決めたというのはおそらく初めてなのではないかと思います。その3年間を準備期間として行政へのプレゼン、意見交換、地域に対する取り組みが出来ました。
これが想定外にうまくいったことです。
中でも一番すごかったのは、今までどこの劇場でも実践できなかった「地域と劇場の繋がり」ができたことですね。
具体的にはどういったことでしょうか。
地域の方が何ができるか、劇場が何ができるかを、リサーチしたり、アドバイスをもらったり、いろんな商店街や自治体の会議に参加してたくさん話し合えたんです。これは本当によかったですね。
準備期間の3年間で、地域の方からのアイデアで形になったものはありますか。
たくさんの会議を重ねていく中で、“『座・高円寺』を応援してやろう”ということから、地域協議会というものができました。いろいろな年齢層、職業の方が80名くらいです。
80名とはすごいですね。
看板のことや、ホームページのこと、飾りなど、いろんなことにアドバイスをいただいたんですが、そんな中で、「なにかフェスティバルをやりたいね」という流れがあり、そこから大道芸の話が出てきました。
そうだったんですね。
それなら春夏秋冬でそれぞれなにかやろう、と盛り上がり「春の大道芸」、「夏の阿波おどり」、「秋の高円寺フェス」、「冬の演芸祭」をやろうと。
ということは、大道芸を含めていろいろなイベントは前々から準備計画がされていたということですか。
僕たちが計画したということではないんです。僕たちは「こんなのもいいよね」と話していただけなんですが、それをみなさんが手を挙げて形にしていかれたんです。
でも、このお祭りは、「地域の方もお金を出し、劇場も場所を提供してお金も出す」という形を取っています。
お互いが責任を持った共同作業。対等の立場で祭りをするからすごく盛り上がるんです。
だから、「自分たちで企画してお金を出して、こんなに街の方が喜んで、こんなにいいものはない」って、みんなが思っているんです。
「自分たちで作っていく」だと全然違いますよね。
行政が主導するのでも、劇場だけでやるのでも難しい。
劇場を飛び出して街の人と一緒にやることが大事なんです。
その意味でも地域に密着できた3年間は大きかったですね。
はい。
以前、「『座・高円寺』ができて高円寺は変わったよ」と言われたことがあったのですが、それはもう、本当にうれしかったですね。
私も、高円寺のイベントがここ最近になって一気に増えたと実感しています。
(笑)高円寺の人に感じる前向きさも大きな要素ですね。これは他の地域にはない特色だと思います。
また、先ほどの4つ(「春の大道芸」「夏の阿波おどり」「秋の高円寺フェス」「冬の演芸祭」)に「杉並演劇祭」を含めた5つのお祭りを杉並ではやっていますが、これができたのは行政のバックアップもあったからですね。すごくありがたかったです。
取材日:2010年5月9日
<第3部>へつづく