Column 7 今の高円寺を生きる人
座・高円寺支配人 桑谷哲男さん(3)
■桑谷哲男さん<第3部>
杉並区立杉並芸術会館『座・高円寺』支配人
『座・高円寺』には若い方を育てる『劇場創造アカデミー』もありますね。
劇場をつくる「人」を見つけ、育て、送りだすためのアカデミーですね。
僕らの時代にも自由劇場が若い役者を育ててくれたし、佐藤B作、柄本明、高田純次、ベンガルもみんなそこの研究生だった。それを振り返ると人を育てる事はやっていくべきだと考えたんです。
『劇場創造アカデミー』に来られるのは、高校を出たくらいの方が中心なのでしょうか。
いろいろな人がいますよ。
劇団を主宰しているような人もいますし、これからやりたいと考えている人、「これまで自己流でやってきて、再教育を受けてみたい」という人など、様々です。
なによりここのアカデミーがいいのは、劇場があることで実践ができることです。
机上の勉強だけではないということですね。
そうです。
体を使って匂いを、そして空気を体感するということが、役者にとって一番重要なことだと思います。ここから生徒たちが巣立っていければ、きっと将来は明るくなるんじゃないかなと期待しているところです。
『座・高円寺』の活動は本当に幅広いですよね。
まったく(笑)。
現代劇の資料の収集・保存を行う『演劇資料室』もやっていますしね。
次になにか企画していることを教えていただけますか。
そうですね。
渡辺美佐子さん主演、井上ひさしさん脚本の作品『化粧』の次のレパートリー作品を作っていくことも楽しみだし、子どもたちのための公演『旅とあいつとお姫さま』では杉並区の小学4年生全員を招待する予定です。
杉並区の小学4年生全員ですか?ものすごい人数になりませんか。
4000人くらいかな(笑)。
劇場に来て芝居を見てもらうのが楽しみです。
これも杉並区の協力があってのことで、画期的なことですね。
子どもを持つ親世代や、これから子どもを生もうとする方たちが杉並区に住むきっかけになるかもしれませんね。
やっぱり健全で元気な街、にぎやかな街には人が集まりますよね。
そうして、たくさんの人を巻き込んでいきたいと思うんです。
家族の食事中に、野球やテレビの話だけでなく、
芝居の話が親子でできたらすばらしいと思いませんか?
そんな話ができるお父さんってのもかっこいいですよね。
会話の幅も広がります。
大人は子どもの肉体的な健康状態と同じように、
心の栄養状態を気にしてほしいと思うんです。
芝居も、絵の展示会も、音楽コンサートも、どんどん体験させてほしいですね。
ソフトの充実ということですね。
そうそう。心の栄養補給をね。ぜひ劇場にも親子で足を運んでくだされば。
劇場は敷居があるように感じている方もいるのですが、
下駄履きで買い物の帰りにでもふらっと寄ってもらってもいいところなんですよ。
私たちも、地域の人に喜んでもらえるような、そんな劇場作りをしていくつもりです。
取材日:2010年5月9日